中国絵画デジタル・アーカイヴ・プロジェクト

 東京大学東洋文化研究所 東アジア美術研究室では、過去約半世紀に渡って国内外の中国絵画コレクションの悉皆調査を継続的に行ってきた。その成果が『中国絵画総合図録正編5冊・続編4冊である。1982年に正編の刊行が開始され、2001年に続編が完結した。その対象は中国大陸の所蔵機関・個人及び台北故宮博物院を除く世界中の全ての地域に存する中国絵画である。図版入りの図録が出版される前に東洋学文献センター(現在の東洋学研究情報センターの前身)よりセンター叢刊の形で目録が出版されている。

 この出版の基礎になった写真資料が全て東京大学東洋文化研究所に蔵され、調査カードの形で国内外の研究者に公開されている。

第1回調査

第2回調査
4×5inchモノクロ ネガ 16,797枚 8,953枚
35mm モノクロ ネガ 18,312枚 24,756枚
35mm カラー ポジ 18,115枚 17,292枚

 この中国絵画写真アーカイヴは複写による写真資料を含めれば20万点に及び、その充実は世界随一と称して過言ではない。

 『中国絵画総合図録』正編の反響は非常に大きく、この形式が一典型となって、中国大陸(中国古代書画図目』)・台北故宮博物院(『故宮書画図録』)それぞれのカタログ・レゾネの出版を促した。これらの出版によって世界中の中国絵画の所在情報が明らかにされたのであり、ここにいたって初めて世界に現在どのような中国絵画が何処にどのくらいあるか、その大きな全容が見えつつあるのである。それは、すなわち、美術史学に必要な学問の土台がやっとできたとも見なせよう。

 当研究室及び附属東洋学研究情報センター造形部門では、1999年度、センター発足と同時に中国絵画デジタル・アーカイヴ・プロジェクトを開始した。まずこれらの調査資料をデータベース化し新たな整理の基礎とすると同時に、調査の際撮影された作品のフィルムの保存のためにデジタル化を行っている。又、これまでの蓄積をさらに拡大するために中国絵画の現地調査をその対象範囲を広げて継続的に行っている。

 ここに試験公開する中国絵画所在データベースは、研究者のさらなる利便を図るため、蓄積された調査資料の書誌データに基づき作成したものである。現在では、正編・続編共にデータの検索が可能である(2004年度)。